まじない食とは②
「YOU ARE WHAT YOU EAT」という言葉があります。
「あなたはあなたが食べたもの出来ている」、転じては「食は人を作る」といった意味でしょうか。
私たちは毎日何かしらの食べ物を食べ、生きています。
健康な体になるのか、それとも不健康になってしまうのかも、実際のところ食べ物に大きく左右されます。
命をつなぐためには食べることは不可欠です。
そんな身近な食に、招福や病除けを願う縁起担ぎがとりいれられたものが多いことをご存知でしょうか?
日本人は昔からさまざまな縁起担ぎを暮らしにとりいれ、招福を願ってきました。
家から出る時には火打石で清めて穢れを祓うことで無事故を祈り、
語呂合わせから吉事を連想させて招福を願うといった具合です。
縁起を担ぐ食のことを縁起食といいますが、
現代でも縁起食はさまざまな場面で登場します。
たとえば、ここ一番の勝負時に「カツ丼」を食べて勝利を祈願したり、
受験生が受験前にチョコレート菓子の「キットカット」を食べて「きっと勝つと」合格を祈ったりするのも現代流の縁起食と言えるでしょう。
縁起食の身近な例として、正月の「おせち料理」があります。
おせち料理は縁起食の宝庫。お重の中にあふれんばかりの縁起担ぎが詰まっています。
たとえばおめでたい赤色の「車エビのつや煮」は、くるんと曲がった形にかけて「腰が曲がるまで長生きできるように」と願います。
黒豆は「まめ」とかけて「一年まめに働けるように」。
たっぷり卵を持つ数の子は「子宝に恵まれるように」。
色彩にも縁起を担ぎが込められます。
紅白なますはおめでたい紅白を彩り、
栗きんとんはつやつやした黄色から金銀財宝を連想させます。
おせちは人の願いがぎっしり詰まった「祈りの小箱」です。
縁起担ぎが行われるのはお正月だけではありません。
日本では昔から、一年を通じてさまざまな縁起食が食されてきました。
一月七日の「七草粥」は芽吹いたばかりの春の七草に邪気を祓う力を見て、
食べて無病息災を願うもの。二月三日の節分の豆まきは、豆(まめ)と「魔滅(まをめっする=まめ)」をかけて魔除けを願うもの。
大晦日に食べる「年越し蕎麦」は、切れやすいそばにかけて、災厄が切れることを願うものです。
このように私たちの生活に欠かせない「食」にはさまざまな願いが込められていますが、さらに日本各地を見渡すと、地域独特に祈りや願いを込めた食べ物がたくさん残され、受け継がれています。
私はそれを「まじない食」と名づけ、取材を続けてきました。
吉野りり花著『日本まじない食図鑑』 と、雑誌に寄稿した文より、
一部抜粋、転載しました。詳しくはぜひ本で読んでみて下さい。